皆さんは「ADL」と「IADL」という言葉を聞いたことはありますか?
ADLとは、「Activities of Daily Living」の略で、「基本的な日常動作」のことで、食事や着替えなど最低限の日常生活がどの程度ご自身で行えるかを示しています。
それに対してIADLは、「Instrumental Activities of Daily Living」の略で、IADLはADLよりも複雑な動作と判断が求められる日常生活での「応用的な動作」のことで、買い物や料理などがどの程度ご自身で行えるかを示しています。
これらが低下してしまうと、認知症など様々な病気を併発し、要介護状態になる恐れがあると言われています。
今回は生活に欠かせない動作の低下予防に必要な知識として、ADLとIADLの違いやADL低下の予防法をご紹介します。
IADLの低下予防には、バランスの良い食事が大切です。
記事後半では、そふまるの栄養管理士が監修した献立もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
IADLとは?ADLとの違い
ADLとIADLは、介護やリハビリの業界では一般的に使われている言葉ですが、初めて聞いたという方も少なくないと思います。
ここではADLとIADLについて簡単にご説明します。
■ADL 「Activities of Daily Living」
食事・移動・排泄・入浴・更衣などの最低限の日常生活動作を意味します。
日常生活を送るうえで基本的な動作が低下してしまった状態は要介護度が高く、ADLの評価は介護やサポートの必要性を測るうえで重要な指標となっています。
■IADL 「Instrumental Activities of Daily Living」
日本語で「手段的日常生活動作」と訳され、具体的には買い物・料理・洗濯・掃除・買い物などがあげられます。
ADLよりも複雑で難易度が上がり、判断力も求められる動作を指していることが分かります。
IADLは認知症の進行や身体機能の低下が原因で自己管理が難しくなるため、周囲の方が早めに気付き、適切なサポートの程度を判断するうえで重要な指標となります。
ADLとQOLの関係
ADLは介護をするうえでの基本概念でもありますが、QOL(「Quality of Life」の略)とも密接な関係にあり、その維持や向上が近年重要視されています。
ここではADLとQOLの関係について簡単にご説明します。
QOLとは、日本語で「生活の質」と訳され、主観的な幸福感や満足度をあらわす指標の一つです。
これは、心身的に満たされた生活に焦点を当てた考えで、その人にとっての「幸せ」や「生きがい」といった価値観によって変わるものです。
例えば、ADLができているとしても、生活の満足度が低ければQOLは低いことになります。
一方で、身体機能が低く介護が必要な状態であっても、意思が尊重され充実した日々を送れていればQOLは高いと言えます。
ADL・IADLの低下を予防するには?
IADL低下を防ぐことは、QOL(生活の質)の維持や向上に繋がります。
IADLの低下をできる限り防ぐには、バランスの良い食事と適度な運動、また被介護者を注意深く見守ることがとても大切です。
【本人の意志を尊重したサポートを心がける】
周囲からのサポートがなくてもできることを奪ってしまうと、IADLを低下させる恐れがあります。
自力でできること、できないことを把握したうえで、最低限の介助をすることがIADLの低下予防とQOLの維持に繋がります。
【趣味や役割を持つ】
基本的な生活に加えて、趣味や他者との関わりによる楽しさもQOLの向上の一助になります。
まずは無理のない範囲で様々な場所へ出かけてみるのもおすすめです。
外出の機会があると身だしなみを整えたり、身体を動かしたり、考えて行動する場面が増え、生活ににメリハリが出ます。
【高齢者が動ける環境を作る】
一人での歩行が困難でも、自宅の一部に手すりを付けるなど、少しの環境整備でも、ADL低下の予防になります。
介助なしでの行動範囲が広がり、被介護者の負担軽減や意欲を引き出すことに繋がります。
健康的な食事とは?献立をご紹介
前項でご説明したように、IADLの低下予防のために毎日の食事が大切です。
身体機能を維持するために、筋肉を作るたんぱく質を効率よく取り入れるには、ビタミンや鉄・マグネシウムといった栄養素が必要になります。
バランスの良い食事となりやすい一汁三菜の食事では、主菜からたんぱく質、副菜からビタミン・ミネラルを摂取することができます。
副菜や汁の具に野菜や芋、海藻、きのこ類を加えるとビタミン・ミネラルの栄養素を摂ることができます。
最後に、そふまるの栄養管理士が監修した栄養バランスのとれた一汁三菜の献立をご紹介します。
・ごはん
・さばの味噌煮
・きゅうりとカニカマの酢の物
・ひじきの煮物
・えのきと麩の吸い物
そふまるでも人気の高い「さばの味噌煮」をメインにした和食の献立です。
素材の形はそのままに、舌でつぶせる柔らかさに仕上げているので、とろけるような食感が魅力です。
さば等の青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれるn‐3系脂肪酸が含まれます。
脳を活性化させて記憶力をよくする効果があり、認知症の予防に効果が期待できます。
また、EPA(エイコサペンタエン酸)もn‐3系脂肪酸で血栓の予防や高血圧の予防に効果が期待できます。
さらに、善玉コレステロールを増加させて、悪玉コレステロールを減らす効果も期待できます。
副菜の彩り豊かな「きゅうりとカニカマの酢の物」は、お酢の酸味で塩分控えめにいただくことができます。
お酢には疲労回復効果もあると言われており、身体にも優しい一品です。
ひじきの煮物には、カルシウムや食物繊維、マグネシウムや鉄などの栄養素が含まれます。
油揚げや茹で大豆などを入れると、必須アミノ酸をバランス良く含んだ良質なたんぱく質が摂取できます。
また、大豆のイソフラボンは骨粗しょう症の予防効果も期待できます。
ひじきの煮物は日本の伝統的なおかずでありながら、高齢者にとっては嬉しい栄養素を含むおかずです。
今回は、ADLとIADLについて、またその低下予防についてご紹介しました。
ADLとIADLの低下予防には、被介護者ご自身の意識だけではなく、周囲のサポートもとても重要であることがお分かりいただけたかと思います。
誰しも加齢に伴い、身体機能は衰えていくものです。
健康を維持するため、栄養バランスの良い食事や適度な運動は欠かせないので、早い段階から意識してみてほしいと思います。
監修者
上田 稚子(Ueda Wakako) 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として亜急性期病院にて幅広いライフステージ、様々な疾患に応じた栄養指導をしてきました。
現在は、名阪食品株式会社にて介護食ブランド「そふまる」の研究開発に携わっています。