寒さが厳しい季節、家の中や外出時に、つまずいたり滑ったりして転びそうになった経験はありませんか?
冬は暖かい部屋から寒い場所への移動で急激な温度変化から、筋肉が固くなり動きが鈍くなることによって、体のバランスを崩しやすく、転倒のリスクが高まります。
高齢になると身体機能が徐々に低下し、転びやすくなります。
骨折などの大けががきっかけで寝たきりになってしまうこともあるため、高齢者は特に注意が必要です。
今回は高齢者の転倒が多い理由と、事故を防ぐための注意点、転倒予防に効果的な栄養素をご紹介します。
目次3では、管理栄養士によって監修された簡単な介護食レシピもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
高齢者の転倒が多い理由と注意点
日常生活での思わぬ転倒は、高齢者に気を付つけてほしいことの一つですよね。
高齢者の日常生活における事故の原因は、なんと8割が「転倒」だと言われています。
特に冬は、急激な温度変化で筋肉が固くなり、服装も厚着になることで、動きが鈍くなります。
ここでは、高齢者の転倒リスクが高い場所やその注意点、転倒予防についてお伝えします。
まず、高齢者が転倒しやすくなる理由として次のことが挙げられます。
●持病や薬の影響
●運動不足
●生活環境の変化
大きな要因としては、加齢による身体機能の低下と注意力の低下があります。
瞬発力や柔軟性などが衰え、とっさの反応やスムーズな動きが難しくなり、そのような状況で焦りや緊張が生まれ、注意力が低下して転倒してしまう恐れがあるのです。
運動不足もまた転倒を引き起こす要因の一つです。
散歩をしたり、自宅で座りながら足を上下に動かすなど簡単なものでも日頃からこまめに運動やストレッチを心掛けて行うことが転倒予防に繋がります。
また持病がある方は、服用している薬の影響でふらつきや立ちくらみなどの副作用が現れることもあります。
体調の変化がないか、周囲がよく観察するように心がけることも大切です。
転倒事故の半数近くは自宅で起きています。
リスクを軽減し、安全で快適に過ごせるように生活環境を整えることも重要です。
室内に大きな段差が無くても、小さな段差や電気コード、カーペットなどの敷物に足を取られることも少なくありません。
特に冬場は、暖房器具のコードが増えると思います。電気コードは、歩く動線を避けて壁のほうへ寄せるか、部屋の奥へまとめるようにしましょう。
めくれやすいカーペットやマットの下には滑り止めシートを敷き、こたつ布団はできるだけテーブルの大きさと合わせて角は折り込むようにしましょう。
床に新聞や本などを置かないよう、整理整頓をしておくことも大切です。
雪で路面が凍結している場合はもちろん、雨の時は路面や店先の床も濡れていて滑りやすいので注意が必要です。
年末年始の店先は人も多く、めくれたマット、濡れたスロープなど「ぶつかる」「つまずく」「滑る」などのリスクが非常に高まります。
道路はマンホールや側溝、横断歩道の白線部分は濡れると滑りやすいため、可能であれば避けて歩きましょう。
また、自分の足のサイズにあった靴を履くことはもちろん、着脱しやすくフィットしやすいマジックテープ付きの靴など、転倒防止になる靴を選ぶのも良いでしょう。
予防に効果的な栄養素の紹介
ここからは食事の面から、高齢者の転倒予防に効果的な栄養素を3つご紹介します。
高齢者の転倒、またその際の骨折予防には、ビタミンD・カルシウム・アミノ酸の摂取が効果的です。
【ビタミンD】
カルシウムを効率良く吸収させる働きがあり、骨を丈夫にして筋力を高めてくれます。
ビタミンDは日光を浴びることで作られますが、外出する機会が少ない高齢者は不足しがちな栄養素の一つです。
鮭、鰹、しいたけ、しめじ、といった魚類やきのこ類に豊富に含まれています。
【カルシウム】
丈夫な骨や歯を作るだけでなく、筋肉の収縮や神経を安定させる働きがあります。
ビタミンDと一緒に摂ることで、吸収されやすくなります。
不足すると骨粗しょう症の原因にもなります。カルシウムは体内では作られないので、普段の食事から摂るように心がけましょう。
牛乳をはじめとする乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、ワカメや海苔などの海藻類に多く含まれています。
【アミノ酸】
筋肉量を維持したり、運動時のエネルギー源となる栄養素です。
加齢に伴う筋力の衰えや免疫力を回復させたり、認知機能をサポートする働きもあります。
鯵、秋刀魚、鯖といった魚類や肉類、豆腐や納豆などの大豆製品に含まれています。
動物性食品には脂質を多く含むものもあるため、植物性食品も取り入れながら、バランス良く摂ることが大切です。
レシピのご紹介
ここでは転倒予防に効果的な栄養素を豊富に含む食材を使ったレシピを2つご紹介します。
★レシピのポイント
さばの水煮の缶詰とマカロニグラタンの素を使った簡単なレシピを考案しました。
さばの水煮は骨まで食べられるのでカルシウムの摂取におすすめです。
また、カルシウムの吸収を促進するしめじのビタミンDが同時に摂れるメニューです。
さばにはアミノ酸、ビタミンDの他にも、貧血予防に効果的な鉄分や正常な味覚を維持するのに効果的な亜鉛なども含まれ、栄養満点な食材です。
エネルギー 425kcal
たんぱく質 30.1g
カルシウム 444㎎
マグネシウム 51.3㎎
鉄 1.7㎎
ビタミンD 10.2μg
食塩相当量 3.4g
さば缶(水煮)...1缶(175g)
玉ねぎ...100g(1/4個)
長ネギ...20g
しめじ...30g(1/3P)
グラタンの素...1箱(2人分)
牛乳...300㎖
水(さばの水煮缶の煮汁も含む)...100㎖
粉チーズ...6g(大さじ1)
塩…0.8g
水...300㎖
〈作り方〉
①⽟ねぎ・しめじ・⻑ネギは洗って⾷べやすい⼤きさに切ります。
②さば⽸はさばと⽸詰の煮汁に分け、さばはフォークで軽くほぐします。
③鍋に②の材料を⼊れ、しんなりするまで炒めます。
鍋で野菜を炒める際、焦げそうな場合は油を入れてください。
④さばを⼊れてさっと炒めます。⼤きいさばがあれば、この時にほぐします。
⑤ミックス粉、⽔、⽜乳、マカロニを加えて、 ⽊べらで混ぜながら沸騰させます。
⑥沸騰したら、弱⽕にしてさらに3分⽊べらでかき混ぜながら煮ます。
マカロニは最後のオーブンで火が通るので、お皿に盛り付ける際は固くても問題ありませんが、やわらかいマカロニがお好みの場合は、時間を少し延ばして煮るのがコツです。
⑦グラタン⽫に⼊れて、粉チーズをかけます。
⑧オーブントースターの強⽕で5分程度加熱したら完成です。
★レシピのポイント
カルシウムがたくさん含まれている牛乳をたっぷり使ったお鍋料理です。
お野菜や鶏肉の栄養がたっぷりのお汁を飲むとより栄養を摂ることができます。
飛鳥鍋は鶏肉を使用し、牛乳を煮立てすぎないようにするのが美味しく作るポイントです。
味噌で味付けしているため臭みがなく、牛乳が苦手な方でも食べやすいメニューです。
エネルギー 449kcal
たんぱく質 28.2g
カルシウム 328㎎
マグネシウム 68.8㎎
鉄 2.2㎎
ビタミンD 0.7μg
食塩相当量 2.6g
鶏肉(もも肉)...200g
白菜...100g
水菜...40g
油あげ...1/2枚(12g)
白ねぎ...40g
しいたけ...2枚
■スープ
牛乳...400㎖
水…100㎖
鶏がらスープの素(顆粒)...3g
みそ...20g(大さじ1強)
みりん...18g(大さじ1)
酒...15g(大さじ1)
塩...2g(小さじ1/3)
〈作り方〉
①材料を用意し、野菜は洗って⾷べやすい⼤きさに切ります。
白菜の芯は厚みがあり食べにくいため、斜めにそぎ切りにすると食べやすくなります。
②鶏⾁は小さめの⼀⼝サイズの⼤きさに切ります。
③味噌以外のスープの材料を⼊れて混ぜ合せ、中⽕で温めます。
④沸々してきたら味噌を溶かし⼊れ、具材を⼊れて煮⽴たせます。⽔菜は煮⽴ってから⼊れてさっと⽕を通してください。
⑤お⽫に盛り付ければ完成です。 鍋に切った具材を入れて、味噌を溶いたスープを注いで火にかける作り方でも美味しくいただけます。
今回は、高齢者の転倒が多い理由と事故を防ぐための注意点、転倒予防に効果的な栄養素をご紹介しました。
転倒や転倒による骨折を防ぐには、日頃から筋肉や骨を維持するバランスの良い食事を摂ることも大切です。
転倒しやすい場所には注意を払いながら、丈夫な身体を作るため、今回ご紹介したレシピを参考にしていただければ幸いです。
その他のレシピ
レシピ一覧はこちら監修者
上田 稚子(Ueda Wakako) 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として亜急性期病院にて幅広いライフステージ、様々な疾患に応じた栄養指導をしてきました。
現在は、名阪食品株式会社にて介護食ブランド「そふまる」の研究開発に携わっています。