近頃は栽培技術の進歩により、季節に関係無くほぼ一年中手に入る野菜が増えています。
それでもやはり、美味しくなるのは旬の時期。栄養価についても、収穫時期により差があるのをご存知でしょうか?
そもそも「旬」とは、野菜や果物、魚などの出盛り期や食べごろの時期を指し、他の時期に比べて美味しいだけでなく、栄養価も高いとされています。
季節に応じて健康な体をつくるため、その時期に摂りたい栄養素が豊富に含まれているのです。
特に、若者に比べて食事量が少なく栄養の確保が難しい高齢者は、旬の野菜から効率良く栄養を摂取することが大切です。
今回は、高齢者にも食べやすく栄養満点の秋野菜と、そのおすすめレシピをご紹介します。
高齢者にも嬉しい秋野菜の栄養素
秋野菜には、エネルギー源となる糖質や腸内環境を整える食物繊維を豊富に含むものが多く、冬に向けた健康な体づくりに役立つ栄養素が沢山含まれています。
気温が下がるにつれて体の代謝量が増え、寒さに抵抗するための冬支度を始めます。これが「食欲の秋」と言われる理由で、自然と食欲が増します。
寒い冬に向けて、健康な体をつくるために必要な、高齢者にも嬉しい秋野菜に含まれる主な栄養素をご紹介します。
【かぼちゃ】 βカロテン、カリウム、ビタミンC
【れんこん】 食物繊維、ビタミンC
【春菊】 βカロテン、カルシウム、鉄、ビタミンB1、ビタミンB2
【にんじん】 食物繊維、βカロテン
【きのこ類】 食物繊維、ビタミン
秋野菜の中でも特に注目したい栄養素、βカロテンやビタミンCは乾燥する空気やウイルスから鼻や喉の粘膜を守ります。免疫力アップを助ける働きがあるので、風邪予防にも効果が期待できます。
また、秋野菜には食物繊維が豊富なものが多く、きのこ類に含まれている水溶性食物繊維は糖質の吸収を穏やかにし、食後の血糖値の上昇を抑えてくれます。
さつまいもなどの穀類に含まれる不溶性食物繊維は、体内で水分を吸い込んで膨らむので、満腹感を得ることができます。便秘の解消にも役立ち、有害物質を排出する効果もあります。
秋野菜の中でもさつまいもやかぼちゃには、エネルギー源となる糖質を多く含みます。糖質は体温を維持する役割もあるので、体の冷えが気になる季節には欠かせない栄養素と言えます。
旬の味覚を使った秋のレシピ3選
★ レシピのポイント
さつまいもはレンジでも加熱できますが、水分量やレンジの機種によって加熱時間が異なります。加熱しすぎると固くて潰しにくくなるので、茹でて潰すのがおすすめです。
今回は紅はるかとシルクスイートを使用しましたが、さつまいもの種類によって水分量や味わいが異なるので、砂糖や牛乳の分量を調整するのが上手に作るポイントです。
さつまいも...300g
(今回は、紅はるか・シルクスイートを使用)
プッチンプリン...1個(67g)
バター...8g
砂糖...9g(大さじ1)
牛乳...15ml(大さじ1)
〈作り方〉
① さつまいもは洗って皮を剥き1cm厚の半月に切ります。
② 鍋にお湯を沸かし、さつまいもを茹でます。(電子レンジの場合、耐熱容器に軽くラップをして水大さじ1を入れて600Wで6分加熱します。)
③ 竹ぐしが通るくらいまで茹で上がったらザルに上げて水気を切り、ボウルに移してマッシャーで潰します。(裏ごししてもOKです。)
④ 潰れたら、バター・プッチンプリンのカスタード部分・砂糖を入れて混ぜます。
⑤ 混ざったら、牛乳を加えてさらに混ぜます。(芋の生地が緩い場合は、加えなくても大丈夫です。)
⑥ 絞り袋に入れて、耐熱のカップに絞り出します。(緩くて絞りにくい場合は冷蔵庫で少し冷ますと絞りやすくなります。)
⑦ プリンのカラメル部分をトッピングし、トースターで5分程度焼いて出来上がりです!
さつまいもの素朴な甘みが感じられるレシピです。水分量の多い生地ですが、絞り袋を使用するので、簡単に成型できます。
★ レシピのポイント
きのこの旨味成分であるグアニル酸を引き出した、きのこの美味しさ抜群のレシピです。
きのこの旨味成分を40℃~60℃で焼いて引き出すので、時間はかかりますが、その分いつものきのこスープとは全く違う仕上がりになります!
さらに、イノシン酸を含むかつお出汁とグルタミン酸を含む味噌を調味料に加え、アミノ酸の相乗効果により、美味しくいただくことができます。
きのこ(しめじ・舞茸・エリンギ)...200g
オリーブオイル...12g(大さじ1)
玉ねぎ...1/4個(60g)
小麦粉...6g
水...200ml(1c)
白だし(かつおベース)...5g(小さじ1)
牛乳...200ml(1c)
塩...2g(小さじ1/3)
味噌...12g(小さじ2)
細ネギ...適宣
〈作り方〉
① 材料を準備し、きのこはさっと洗ってザルにあげます。(汚れをふき取るだけでも構いません。)
② しめじは石づきを取ってほぐし、長さを半分、大きいものは傘の部分も半分に切ります。
③ 舞茸は繊維を断つように3等分に切り、傘の大きいものは小さく割きます。
④ エリンギは石づきがあれば取って、傘の部分を縦半分に割きます。軸の部分も縦半分に切って、繊維を断つように薄くスライスします。傘の部分は縦に薄切りにします。
⑤ 玉ねぎは繊維を断つように薄切りにします。
⑥ フライパンにきのこを入れ、弱火で10分加熱します。
40℃から60℃の手で触れられるくらいの温度できのこを動かさず焼きます。
⑦ 10分経ったら、裏返して5分加熱します。
⑧ オリーブオイルを入れて、きのこ全体に絡めたら、中火にして焼き目を付けていきます。
この時もきのこはひっくり返さず、焼き目が付くまでじっくり焼いていきます。
(フライ返しで抑えて焼き目を付けるのはOK。)
⑨ 焼き目が付いたら、ひっくり返して裏面にも焼き目を付けていきます。(焦がさないように注意しましょう。)
⑩ 焼き目が付いたら、玉ねぎを入れて中火で加熱します。
⑪ 玉ねぎがしんなりしたら、小麦粉をふりかけて炒め、水を加えます。
(フライパンの底に付いたきのこの旨味もスープに移していきます。)
⑫ 少し火を弱めて白だしと牛乳、塩と味噌を加えて、とろみがつくまで混ぜながら加熱します。
★ 塩は無くても美味しくいただけますが、塩分があると旨味成分はより感じやすいので、少しだけ入れるのがポイントです。
⑬ 最後に小口切りにした細ネギを加えて完成です!
付け合わせにおすすめのレシピ
★ レシピのポイント
にんじんの色が鮮やかなので、付け合わせや副菜にすると、食卓が華やぎます。薄切りにしたにんじんをサッと茹でるので、高齢者の方でも食べやすいです。
にんじん...100g(小1本)
りんご...50g
●はちみつ...2g(小さじ1/3)
●酢...10g(小さじ2)
●からし(チューブ)...0.5g
●塩...1.5g(小さじ1/4)
オリーブオイル...20g
白すりごま...2g(小さじ1)
イタリアンパセリ...適宜
〈作り方〉
① にんじんは洗って皮を剥き、ピーラーやスライサーで千切りにします。
② りんごはにんじんと同様に千切りにします。
③ イタリアンパセリはみじん切りにします。
④ マリネ液を作ります。ボウルに●の調味料を入れ、泡だて器でよくかき混ぜます。
⑤ マリネ液が黄色っぽく混ざり合ったら、白すりごまとイタリアンパセリを加えます。
⑥ 良く混ざったら、泡だて器で混ぜながらオリーブオイルを少しずつ加えてマリネ液は完成です。
⑦ 鍋にお湯を沸かし、にんじんとりんごをサッと茹でます。(1分)
⑧ ザルに上げて水気を切り、さらにクッキングペーパーでも水気を取ります。
⑨ マリネ液ににんじんとりんごを入れて軽く混ぜ、冷蔵庫で冷やしたら完成です!
★ 具材が熱いうちに入れると味がよくなじみます。
今回はりんごを使用しましたが、梨や柿でも美味しく仕上がりますので、旬の果物を活用しましょう。
そふまるの「めばるの生姜照焼き」に先程ご紹介した「りんご入りキャロットラぺ」を付け合わせてみました。
めばるの生姜照焼き
UDF区分:「歯ぐきでつぶせる」
旨みたっぷりのめばるを生姜の効いた甘辛い味付けに仕上げました。
めばるは高たんぱくで低カロリーの白身魚です。脂質が少ないぶん消化吸収が良いのも特徴です。旨味たっぷりのめばるを生姜の効いた甘辛い味付けに仕上げています。
にんじんは年中売られている野菜ですが、旬である秋から冬にかけて収穫されたにんじんは、特に栄養豊富で甘みが強く、とても美味しくいただけます。
色鮮やかなオレンジ色はβカロテンに由来し、体内でビタミンAに代わります。視力の維持、皮膚や粘膜を丈夫にしたり、体調を崩しやすい季節の変わり目に免疫力を強化してくれる栄養素です。
料理の基本に「五味五色五法」がありますが、このうち「五色」は青、赤、白、黒、黄に分けられます。にんじんは「赤」とされ、栄養はもちろんのこと、料理の見た目に華やかさをプラスしてくれます。
今回は高齢者に嬉しい秋野菜の栄養素とレシピをご紹介しました。 旬の野菜は他の時期よりも栄養価が高く、美味しいうえにお安く手に入りやすいというメリットもあります。
寒くなる冬に向けた健康な体づくりのため、ぜひ積極的に秋野菜を取り入れてほしいと思います。
その他のレシピ
レシピ一覧はこちら監修者
上田 稚子(Ueda Wakako) 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として亜急性期病院にて幅広いライフステージ、様々な疾患に応じた栄養指導をしてきました。現在は、名阪食品株式会社にて介護食ブランド「そふまる」の研究開発に携わっています。