年齢を重ねると、お肉を「脂っこい」、「噛み切れない」と感じはじめ、どちらかというと低カロリー・低脂肪なあっさりとした食事を好む傾向があります。
さらに高齢になると噛む力が弱まり、消化機能も衰えるため、消化に時間のかかる肉類や脂っこいものを避けるようになります。
中高年にとって、お肉の摂りすぎはメタボリック症候群に繋がるという印象が強いかもしれませんが、最新の調査では「お肉を食べる高齢者ほど長生きする」ということが分かっています。
それでは、お肉を食べることによって得られる効果はどのようなものなのでしょうか。
今回は高齢者にこそ、お肉を食べてほしいと考える理由と食べる上での注意点、お肉を食べやすくする調理のポイントをご紹介します。
高齢者にこそお肉を食べてほしい
高齢者は若い人に比べると栄養の吸収率が低く、たんぱく質や脂質などがどうしても不足しがちです。たんぱく質は、筋力や心身の活力が低下してしまうフレイル予防にも欠かせない栄養素と言えます。
特に、老化に伴い食が細くなることでたんぱく質が不足すると、足腰の筋力が低下します。また、病原体などから身を守る免疫力も低下してしまうので、風邪をひきやすくなったり、肺炎のリスクも高まります。
たくさんの量を食べられない高齢者ほど、お肉をしっかり食べることでたんぱく質を効率良く摂取することができるのです。
お肉の栄養素の中でも、特に豊富である「動物性たんぱく質」は、筋肉や血液、髪や肌などを作るもとになります。
適量のお肉を摂って運動をすると、筋力を維持しやすくなるとともに、糖尿病や動脈硬化といった生活習慣病の予防や健康増進につながります。
また、赤身肉には鉄分(ヘム鉄)が多く含まれ、ほうれん草などに含まれる非ヘム鉄よりも吸収率が高いので、貧血予防にも効果的です。
コレステロールは体に悪いというイメージがあるかもしれませんが、適度に摂取すると血管を強くし、脳卒中などの予防も期待できるとも言われています。
高齢者がお肉を食べることには、次のようなメリットがあります。
【筋力の低下を防ぐ】
人間の体と組成が似ている牛肉や豚肉、鶏肉などに含まれるたんぱく質は、分解・吸収がしやすいと言われています。 たんぱく質は筋肉を作るもとになるため、適度な運動とともにお肉を食べることで、足腰などの筋肉が維持しやすくなります。
また、体をスムーズに動かすことができれば、思わぬ転倒などによる骨折の予防にもつながります。
【貧血予防・改善】
高齢者の10人に1人が鉄分不足と言われていますが、お肉には吸収率の高い鉄分が豊富に含まれており、貧血の予防・改善の効果が期待できます。
【免疫力の向上】
動物性たんぱく質には、免疫力を高める効果があります。
特に、がん細胞に対抗する「ナチュラルキラー細胞」の働きの活性化に欠かせない亜鉛が多く含まれています。
【血圧を下げる】
お肉に含まれている必須アミノ酸「リジン」は血管を強くし、「メチオニン」には、血圧の上昇を抑えてくれる効果があります。
【リラックス効果・うつ病の予防】
お肉には「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促す、「トリプトファン」という成分が含まれています。
セロトニンが分泌されることで、気分の落ち込みを防ぎ、精神の安定や脳の活性化、うつ病の予防にも効果があると言われています。
お肉には健康的な体を保つために欠かせない栄養素が豊富に含まれているということがお分かりいただけたと思います。
食べすぎはNGですが、1日100gを目安に、朝食・昼食・夕食のどこかで食べるように心がけることが大切です。
高齢者がお肉を食べる上でのリスクとは?
前項では高齢者にお肉を食べてほしい理由、メリットなどをお伝えしましたが、腎臓に疾患がある方は、たんぱく質をたくさん摂ると、腎臓に負担がかかってしまい、症状を悪化させてしまう恐れもありますので、主治医や管理栄養士に相談してください。
ここでは高齢者がお肉を食べる際の注意点を3つご紹介します。
① 消化機能の低下による胃腸の不快感
年齢とともに胃酸分泌や消化酵素の活性が低下した影響で、お肉の消化が難しくなり、胃腸の不快感や消化不良が起こる可能性があります。
お肉の中でも鶏むね肉や豚ヒレ肉は脂が少なく胃腸に優しい部位です。茹でて小さくほぐしてスープなどに使用したり、調理前に肉の繊維を叩いて潰しておくことで食べやすくなります。
② 心臓病や動脈硬化のリスク
高脂肪のお肉を過剰に摂取すると、心臓病や動脈硬化のリスクが高まる可能性があります。特に、牛脂・ラード、お肉の皮や脂身の飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を制限することが大切です。
③ 免疫機能が弱いことから食中毒になりやすい
高齢者は若い人に比べて抵抗力が弱く細菌などに感染しやすいため、お肉の調理と保管には注意が必要です。
加熱不足は食中毒の原因となります。十分に火を通して、細菌や寄生虫のリスクを軽減することがとても重要です。
50年の給食事業で得た食べやすくするためのノウハウ
当社は、給食サービスを50年あまり続ける中で、たくさんのノウハウを蓄積してきました。 ここでは、介護施設でお肉料理を提供する際にも活用している、高齢者でも食べやすくなる調理のポイントをいくつかご紹介します。
鶏のコーラ煮や角煮のビール煮などのように、炭酸飲料やビールを注ぎ入れ、煮込むという簡単な方法があります。
炭酸飲料で煮込むことで、お肉の組織が酸性に傾き、保水性が向上して柔らかく仕上がります。また、ヨーグルトに漬け込むことで、乳酸菌が肉の繊維をほぐしてくれます。
はちみつには加熱によるたんぱく質の凝固を防ぐ効果があります。ハチミツを使用した照り焼きが柔らかく仕上がりおすすめです。
お肉を長時間煮込むと硬くなる恐れがありますが、圧力鍋を使用することで短時間で柔らかく仕上げることができます。豚の角煮やビーフシチューなどの塊肉を調理する際におすすめです。
繊維を断つように筋切りをしたり、お肉を叩く下処理をすると、柔らかくなるだけではなく、火の通りも早くなるので、水分が過剰に奪われずパサパサになりにくいです。
モモ肉やロース肉・肩ロース肉などの塊肉は、高齢者にとっては食べにくいので、薄切り肉を使用したり、重ねてミルフィーユ状にするのがポイントです。
ヒレ肉やモモ肉よりも、しゃぶしゃぶ用の肉やバラ肉のように良い脂がのっているお肉を選ぶことも大切です。また、お肉に小麦粉や片栗粉を付けると、口当たりも良く、調味料も絡みやすくなります。
鶏むね肉やモモ肉は繊維を断つように、斜めにそぎ切りにするのがポイントです。
牛肉や豚肉に比べて脂が少ないので鶏肉を柔らかくしっとり仕上げるには、水分量を保つことがカギとなります。
塩分のある調味料に長く漬け込んでしまうと浸透圧の作用で水分が奪われ、硬い仕上がりになってしまいます。下処理の調味料をもみ込んですぐに加熱することも大切です。
卵や片栗粉、とろろや豆腐などのつなぎを加えて加熱すると、パサパサになりにくいです。ハンバーグやつくねといったミンチ状のものは比較的食べやすく、介護食にぴったりな料理です。
そふまるのお肉メニューをご紹介
そふまるのハンバーグは、噛む力や飲み込む力が弱い方でも安心してお召し上がりいただけるふわふわの食感が魅力です。
アレンジも楽しめる、シンプルな味付けですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
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今回は高齢者にこそ、お肉を食べてほしい理由とそのリスク、食べやすくなる調理のポイントをご紹介しました。
お肉には健康を維持する上で欠かせない栄養素が豊富にふくまれているので、食が細くなりがちな高齢者ほど、意識して食べることがとても大切です。
「最近お肉が食べづらい...」と感じはじめたら、そふまるの商品を活用したり、今回ご紹介したように少しの工夫で高齢者の方にも安心して食べやすくすることが可能です。
高齢者にいつまでも元気でいてもらうために、今回ご紹介した調理のポイントを参考に、毎日の食事の中にバランスよくお肉料理を取り入れていただければと思います。
監修者
丸亀 真依(Marugame Mai) 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として名阪食品株式会社へ入社、特別養護老人ホームの厨房にて、調理業務・衛生管理業務の経験を積む。
その後、保育園・高齢者施設・障がい者福祉施設を担当し献立作成・衛生指導・食育活動に従事しました。
現在はそふまる工房にて、お客様に安心して美味しく食べていただける介護食をお届けするために、日々研究開発を行っております。