おいしく食事を摂ることは、高齢者が健康に生活するうえで、とても大切なことです。
高齢になると、運動量の減少や噛む力の低下により、食欲がわきにくくなり、思うように食事の量を摂れなくなるといったことがあります。
そこで今回は、高齢者が気をつけたい栄養素や、不足しがちなカルシウム、食物繊維を補うためのおススメの調理方法・レシピなどをご紹介いたします。
高齢者こそ気にしたい栄養素とは?
年齢を重ねるとともに健康への意識も高くなりますが、特に高齢者の場合、必要な栄養を摂取できていない「低栄養」の人が増えています。
低栄養が進むと、筋肉や骨の衰え、免疫力の低下などさまざまな症状が現れてきます。
さらに、噛む力や消化機能の衰えにより、あっさりとした食事を好み、食事に偏りができ、必要な栄養素を十分摂れていないケースも多くあります。
高齢者が不足しがちな栄養素として、下記があげられます。
・タンパク質
・カルシウム
・食物繊維
・亜鉛
・鉄分
・ビタミンE
これらの栄養素をバランスよく摂取するには、1日3度の食事で、主食・主菜・副菜などをしっかり食べることが必要になります。
今回は、特に必要とされる栄養素と、摂りすぎに注意するべき塩分について説明を致します。
栄養素① カルシウムの効能
「カルシウム」は健康を維持していくうえで欠かせない栄養素です。不足すると骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが上がってしまいます。 骨粗しょう症とは…骨量が減り、骨の強度が低下しもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
しかしカルシウムを過剰に摂取すると、高カルシウム血症、泌尿器系結石、前立腺がん、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などの様々な健康障害が起こるため、適度に摂取する必要があります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、国民栄養調査の摂取量、腸管からの吸収率、骨代謝(骨吸収と骨形成のバランス)、尿中排泄を考慮し、1日の推奨量を75歳以上の男性で700㎎、女性で600㎎とされています。
参考文献:「日本人の食事摂取基準」(2020年版)策定検討会報告書 厚生労働省 (外部サイト)
・魚介類(桜エビ630㎎/100g当たり、しらす干し520mg/100g当たり)
・海藻類(ひじき1000mg/100g当たり)
・豆、豆製品(油揚げ310mg/100g当たり)
・野菜類(モロヘイヤ260mg/100g当たり、大根の葉220mg/100g当たり)
・乳製品(牛乳110mg/100g当たり、プレーンヨーグルト120g/100g当たり)
上記の食品に多く含まれます。手軽で効率的にカルシウムを摂取するには、乳製品がおすすめです。コップ1杯、200mlの牛乳には227mgのカルシウムが含まれています。1日コップ1杯の牛乳を飲むだけで、1日に必要なカルシウムの4分の1を摂取できます。
牛乳が苦手な場合は、チーズやヨーグルトで取ったり、料理に加えたりするのがいいでしょう。また、カルシウムはビタミンD(魚類、キノコ類)と合わせて摂取することにより吸収されやすくなります。さけのムニエルなどバター等の乳製品を使用したメニューもおすすめです。
栄養素② 食物繊維の効能
「食物繊維」とは、「人の消化酵素で分解されない食物中の総体」と言われています。食物繊維は水に溶けない「不溶性食物繊維」と、水に溶ける「水溶性食物繊維」があります。
成熟した野菜などに含まれ、糸状のもの、多孔質のものがあり、ボソボソ、ザラザラとした食感が特徴です。
穀類、野菜、豆類、キノコ類、果実、海藻、甲殻類(エビやカニ)の殻にも含まれています。 胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ、腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にし、便通を促進します。
水に溶けることでドロドロのジェル状に変化します。ドロドロのジェル状になった食物繊維は小腸、大腸内に張りついて糖質やコレステロールなどの栄養素の吸収をおだやかにする作用があります。
また、体外に有害物質を排出する作用もあるため、高血圧、糖尿病や脂質異常症の予防に効果があります。
どちらの食物繊維も、高齢者をはじめ、多くの方が1日の摂取量が足りていないとも言われています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、男性20 g以上、女性17 g以上(ともに65歳以上の場合)を食物繊維の1日の摂取目標量として定めています。
参考文献:「日本人の食事摂取基準」(2020年版)策定検討会報告書 厚生労働省 (外部サイト)
・野菜類(ごぼう5.7g/100g当たり、グリーンピース7.7g/100g当たり)
・穀類(大麦8.7g/100当たり)
・豆類(おから11.5g/100g当たり、煮豆インゲン豆13.6g/100g当たり)
・きのこ類(エリンギ3.4g/100g当たり)
・海藻類(カットわかめ35.6g/100g当たり、寒天74.1g/100当たり、ひじき51.8g/100g当たり)
に多く含まれます。日頃から食べている野菜類や穀類、きのこ類など一般的なスーパーマーケットなどでも手に入りやすいです。
根菜やきのこなどの食材は誤嚥のリスクがある高齢者でも食べやすいように工夫しましょう。
塩分の摂りすぎには注意が必要!
不足しがちな栄養素とは違い、糖尿病・高血圧などの生活習慣病の治療上おこる味覚の低下によって、気づかないうちに摂りすぎてしまうのが「塩分」です。
塩分を摂りすぎると、血液中の塩分濃度が高くなり、それを下げるために水分を多くため込むようになります。その結果、血液量が増え、心臓に負担がかかってしまうことになります。 代表的な疾患として高血圧・心筋梗塞・心不全などがあります。
しかし、塩分を減らすために、極端に薄味にしてしまうと、食べる楽しみがなくなってしまうため、無理をせずに減塩に取り組める方法をご紹介します。
①酸味をプラス:酢や柑橘系果実の果汁、トマトなどを使って、アクセントになる酸味を加えましょう。
②香りをプラス:にんにく、しょうが、しそなどの香味野菜やハーブ、各種スパイスの香りや辛み、刺激で薄味をカバー。
③コクをプラス:煮物や煮汁に牛乳や乳製品を加えたり、仕上げにごま油を1滴たらすと料理にコクが出ます
④旨味をプラス:こんぶ、かつお節、きのこ類、干しエビなどから、だしの旨みを引き出しましょう
⑤香ばしさをプラス:焼いたり揚げたりすることで食材についた焦げ目は、料理に香ばしい風味をつけ加えます
⑥とろみをプラス:とろみをつけることで味が食材にまとわりつくため、薄味でも満足感が得られます
減塩を意識していても、つい摂りすぎてしまうなんてこともあるかと思います。そんな時は、どのように対処をすると良いのかを知っておくことが大切です。
・カリウムをとる
カリウムの多い食材(ほうれん草・大豆・納豆・ひじき・昆布・アボカド・りんご・バナナなど)
・水分をこまめにとる
・適度な運動を取り入れる
・カルシウムをとる
そふまるのすべての商品は、健康に配慮された塩分相当量(1人前あたり1.0g以下)で作られているため、安心してお召し上がりいただけます。
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食べやすい調理方法とおすすめレシピ
高齢者が不足しがちな栄養素「カルシウム」と「食物繊維」が多く含まれている食材が気になる方も多いと思います。今回のおすすめは「切り干し大根」です。生の大根に比べて、栄養が凝縮されているので栄養満点。煮物以外にもさまざまな料理に取り入れられ、賞味期限が長く日持ちもするので置いておくと便利な食材です。
切り干し大根には、脂質・カリウム・鉄・ビタミンB1・ビタミンB2など、他にもたくさんの栄養素が含まれています。
<レシピのおすすめポイント>
①切干大根はカルシウムも食物繊維も多い食材です。
②カルシウムの多いちりめんじゃこをたっぷり食べられるメニューです。
③ごま油のこくと香りで塩分を控えることが出来ます。
最後に振りかける白ごまもアクセントになります。
<じゃこ入り切り干し大根の炒め煮>
材料(4人分)
・切り干し大根50g
・ちりめんじゃこ20g(大さじ4)
・人参20g
・白ごま 少々
・煮汁(だし汁300~400g、醤油6g(大さじ1)、砂糖6g(小さじ2))
・ごま油12g(大さじ1))
<下処理>
・切り干し大根はたっぷりの水で洗い10~15分、水に浸けて戻し、食べやすい大きさに切る。
・人参は千切りにする。
<作り方>
①鍋にごま油を入れて中火で熱し、水気を切った切り干し大根をさっと炒め、ちりめんじゃこと人参を加えてさらに炒める。
②全体に油が絡まったら、煮汁の材料を加え、時々混ぜながら煮汁が無くなるくらいまで15分程度煮る。最後に白ごまをふりかけて完成。※ちりめんじゃこの塩分に合わせて醤油は調整してください。※お好みで鷹の爪を加えても!
日頃の食事を少し意識するだけでも、不足しがちな栄養をしっかり摂ることができます。 また食べることは、毎日を楽しく過ごす力になります。栄養が不足していないか、毎日の食事を見直しつつ、必要な栄養素を無理なく摂れるように工夫してみましょう。